人は誰でも強いストレスを感じれば気分が落ち込みます。しかしその憂うつな気分や無気力な状態が2週間以上続く場合はうつ病の可能性があります。心の症状だけでなく、だるさ、不眠、食欲不振、頭痛など体の症状もみられます。日本人では生涯で一度でもかかる割合が6人に1人ともいわれ、発症しやすいタイプは次の通りです。
発症の原因には大きな環境の変化や過度のストレスなどがあり、身近な人の死やリストラなどの悲しい出来事だけでなく、結婚や出産といった嬉しい出来事もきっかけとなります。そのストレスにより、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)の働きが低下してバランスが崩れ、情報伝達がうまく行われなくなるために発症するといわれています。
サラリーマンでは、リストラだけでなく、昇進や降格といった人事や職場の人間関係により発症する場合が多くみられます。少々の失敗では悩まない人なら大丈夫ですが、真面目に考える人ほど危険です。また、大きな仕事を完成させて開放された時も要注意です。大きな緊張の中で仕事をしている時はいいのですが、仕事が完成した時に不調になることがしばしばみられます。
高齢者は多くの喪失体験をし、うつ病になる確率が高くなるといわれています。退職により収入が減少する、社会との結びつきが薄くなる、心身の衰えを感じる、生きがいがなくなるなどの変化を自分の中でうまく受けとめることができない人がなりやすいといわれます。また、認知症の初期にしばしばうつ状態になることもあります。
うつ病は、十分な休養と適切な薬による治療が基本です。
無理を続けず、仕事や家事など一人で抱えずにできることだけをして、心から休まる環境を作ることが必要です。
うつ病に用いる薬は「抗うつ薬」といい、バランスの崩れた脳内伝達物質の働きを回復させる働きのあるものを主に服用します。効果が表れるまでには2~4週間かかりますので、服用してもすぐに症状が良くならないからといってやめるのはよくありません。また、症状が良くなっても自己判断で薬の量を調節したりやめないことが大切です。
女性は男性より2倍うつ病になりやすいといわれています。それは女性ホルモンと関係していて、女性特有のストレスを感じやすい月経前、妊娠・出産、更年期が契機になるからです。
産後2~3週間以降にイライラする、落ち着かない、体がだるい、頭痛がする、赤ちゃんは大丈夫かと心配になる、 泣けてくる等の症状が現れます。出産後は授乳等赤ちゃんの世話に追われ、心身に負担がかかり、産後うつ病に発症しやすくなります。
閉経前後、女性ホルモンの分泌量が減るために自律神経失調症状があらわれます。ほてり、発汗、手足の冷え、肩こり、頭痛、背部痛などの身体症状や、憂うつ感、意欲低下などの精神症状がみられます。自分の体の不調に加え、責任や負担の増大、大きな環境の変化などが発症の契機となります。
全身の倦怠感、脱力感、身体の違和感、食欲不振、動悸、胸部圧迫感、頭痛、眩暈、肩こりなどで内科や脳外科を受診し、しばらく通院してもよくならないという人の中に、訴えは身体の異常だけなのですが、実際はうつ病でこころの症状が隠されている場合があります。これが「仮面うつ病」です。
身体の症状は強く自覚されるので、家族はもちろん本人でさえ身体の病気と思いがちでその治療を受けますが、うつ病の治療がされていないために症状が進行する場合があります。
仮面うつ病の場合、憂うつな気分が少ないためにうつ病をわかりにくくさせているのが特徴です。
躁うつ病とも呼ばれている、およそ100人に1人の割合でかかる可能性のある病気です。
躁状態とうつ状態を繰り返す脳の病気で、時に躁とうつの混じり合う混合状態になることもあります。
躁状態の主な症状は次の通りです。
うつ状態の症状は「うつ病」の時と同じ症状です。
双極性感情障害はⅠ型(社会生活に著しく支障をきたすほどの激しい躁状態とうつ状態がみられる)とⅡ型(比較的軽い躁状態『軽躁状態』とうつ状態がみられる)に分類されます。Ⅱ型の軽躁状態は目立たないことも多く「うつ病」と診断されてしまいがちです。双極性感情障害とうつ病は治療方法が異なるために注意が必要です。
薬物治療と心理社会的治療を中心に行います。
用いる薬は「気分安定薬」という躁状態とうつ状態の治療と予防に効果のあるものを中心に服用します。また、非定型抗精神病薬(主にドーパミンという神経伝達物質に作用する定型抗精神病薬に対して、ドーパミンとセロトニンに作用する新規の抗精神病薬)は躁状態の治療に効果があります。 服薬を継続することで症状を安定させることができます。
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